2011年10月16日(日)に東京・表参道のスパイラルホールで開催された、EVE Online プレイヤーカンファレンスに参加してきた。100名ご招待と聞いてそんなに急に集まるものだろうかと危惧していたが、会場はかなりの入り。プレス関係者や女性プレイヤーも予想以上に多かった。
ネクソン 左留間氏による開会挨拶
開会挨拶には、ネクソン ゲーム運用部 運営1チームの 左留間 正之氏が登壇。日本語サービスに関する説明を行った。EVE Online の開発・運用は今まで通り CCP が担当。ネクソンは自社のネクソンポイントシステムにより日本語で課金が決済できるシステムを EVE に提供する。従って、ゲームクライアントはこれまでどおり世界共通。
(注:「日本語版」と、あたかも従来と別バージョンのクライアントが発売されるかのように各所で報道されているが、既に EVE Online クライアントにはドイツ語/ロシア語の言語切り替え設定がある。実際には既存のクライアントの言語切り替え設定に「日本語」が加わるだけで、別途日本語専用のクライアントが制作されるわけではないだろう)
CCP Hilmar CEO からのビデオレター
次いで米国出張中の CCP CEO、Hilmer Veigar Petursson から届いたビデオレターが上映された。
(字幕全文のトランスクリプトが Onlinegamer.jp に掲載されています)
(要旨)2009年に日本語化プロジェクトを一旦中断したのは苦渋の決断だった。当時の体制では充分な品質の日本語化ができなかった。ローカライズシステムの抜本的改良、日本展開における現地パートナー、プレイヤーコミュニティの醸成が先決という結論になった。
以来、CCP は EVE を多国語に対応させる新しいローカライズシステム「Cerberus(字幕はセルベルスだが、発音はサーベラスと聞こえる)」を開発してきた。これにより、日本語ローカライズの品質向上が見込めるのはもちろん、既存のドイツ語・ロシア語ローカライズが抱える問題も包括的に解決できる。長い間お待たせして申し訳ないが、ようやく Cerberus によって日本語版をお届けできる運びとなった。
また日本語でのサービス開始にあたり、言語や時差の壁を越えるための現地パートナーがどうしても必要だった。わが社は品質に妥協せず、必要とあらば大胆な方針転換も行う。それに協力してくれるネクソンは、実績あるオンラインゲームのパブリッシャーであり貴重なパートナーである。
日本の EVE プレイヤーコミュニティは小さいながら情熱と誇りを持って活動している様がすばらしい。様々なプレイヤーが Wiki やブログ、初心者向け Corp などを通じて情報を惜しみなく共有しており、英語の壁を乗り越えて EVE を生き抜く大きな助けとなっている。今日のイベントが日本のプレイヤーの出会いのきっかけとなることを願っている。
CCP の Torfi Orafsson 氏による基調プレゼンテーション
CCP クリエイティブディレクター(開発の偉い人)Torfi Frans Olafsson 氏によるキーノートスピーチ。EVE の開発理念や特徴についてかなり詳細な解説があった。
1. Maximize human interaction(人間同士のインタラクションを最大限に)
AI を相手にするより人間同士の関係性から生まれるプレイのほうが面白いはずだと考え、システムデザインにおいては、何らかのかたちでプレイヤー同士の交流が発生するような仕組みにするよう心がけている。
2. Perpetual machines(循環し持続するゲームシステム)
プレイヤーの目的と手段をうまく連携させ、ある活動が別の活動のきっかけを生む、永久機関のようなシステム構築を目指す。例えば、艦船を作るためには原料となるアステロイドや月資源の確保が必要であり、その争奪戦に勝つためにもさらに艦船や資金が必要だ。それを手に入れるためにプレイヤーは活動しなければならず、その活動が他のプレイヤーの経済活動を促す。ミッションシステムも同じような思想で設計されている(ミッションをクリアして得た資金で得た船や装備で、より利益の高いミッションに挑戦していく)。
3. Emergent systems(エマージェンスの喚起)
基本はシンプルでも、大勢のプレイヤーが参加し相互干渉することで複雑さや多様さが生まれるようなシステムをめざす。例えばマーケットは、基本的には単なる売買システムだが、何千何万人というプレイヤーが参加することで「市場」や「相場」「景気」といった概念をも備えたリアルな経済社会を形成している。
4. Elegance and simplicity(シンプルかつエレガント)
日本庭園や囲碁のように、EVE のゲームシステムも単純ながら奥が深い仕組みとなるべきである。
5. Awe and wonder(壮大さと驚異)
ゲームの世界にも常に美しさと驚異を。かねて開発進行中と噂されている新しい星雲グラフィックのデモ映像が流れた。
6. Versimilitude(仮想宇宙としての現実らしさ)
キャラクターから艦船、宇宙空間まで、あらゆる視野でのリアリティを追求する。例えば EVE においてプレイヤーが搭乗する艦船は、一部の例外を除き、他のプレイヤーが作ったからこそ存在する。
冬の拡張は Capital Ship バランス調整が目玉となる模様。2012年リリース予定の DUST 514 についても軽く触れられた。
さらに、日本語ローカライズされた次期エキスパンションのデモが披露された。UI が日本語になったクライアントが、実際にサーバに接続して動作する。フォントレンダリングエンジンがまだ未完成だと言っていたが、きれいに収まっているように見えた。また気になる日本語訳も、2009年当時から相当手を入れたらしく、随所にまだ英語が見えるものの、比較的自然な表現になったように思った。アイテム名などの固有名詞は英語で残す方針のように見える。残念ながら日本語インライン入力の状況などは実演されなかったが、現在 Mac 版で非対応となっている状況はぜひ改善してほしいところ。
デモは Caldari 版の Captain’s Quarters を和風顔のキャラクターが歩き回るというもので「ほんとはまだ見せちゃダメなんだけどね」と言いつつチラッとドックアウトしてステーション外を見せるという一場面も。
さらに、かねて復活が熱望されていた旧ステーション環境(Ship Spinning)の再実装版も披露された。シップハンガーからドラッグ&ドロップで瞬時にアクティブな船が切り替わる様子に、客席からは喜びの声が上がっていた。
日本在住プレイヤーコミュニティに関してけっこう熱烈な言及が。日本語化を機に新規参入するプレイヤーの受け皿として、既存プレイヤーにかなり期待をかけているようだ。
キーノートの最後に、参加者のキャラクターポートレートが1人ずつスクリーンに表示されるサプライズ演出があり、会場がどっと沸いていた。私の Eugene も一瞬映ったかな。参加申し込み時に、手持ちのキャラクター名を申告するよう言われていたのはこのためでもあったらしい。
質疑応答コーナー
参加者から事前に募集した質問をいくつかとりあげ、CCP の Olafsson 氏とネクソンの左留間氏が交互に回答した。
Q: CCP にとってネクソンとの提携によるメリットは?
A: 日本に精通した現地パートナーとして重要。提携を通じてお互いに学ぶところも多いと思う。(O)
Q: 日本語化と同時に日本の課金ユーザーは何らかの移行手続きが必要になるのか?
A: ネクソンポイントを利用して課金決済する場合は、NEXON ID の取得が必要になる。ゲームアカウント自体に変更はない。(左)
(注:従来通りの課金が可能かどうかについては明言されなかったが、現実問題として日本在住ユーザーのみにネクソン決済を強制することはきわめて困難かつ非効率的だ。一部プレイヤーが懸念しているような「日本人ユーザーはネクソンに登録しなければプレイできなくなる」ような事態はまず起こりえないだろう)
Q:ネクソンポイントによる課金決済とは?
A: ネクソンで購入したネクソンポイントで PLEX が購入できるようになる。(左)
Q: ネクソンは EVE のアカウント情報を管理することになるのか?
A: EVE アカウントは CCP が管理する。ネクソンは(ネクソンポイント決済に必要な) NEXON ID を管理する。(左)
Q: ネクソン経由で決済する場合、為替レートの扱いは?
A: ネクソンポイントを購入後、それでPLEXを購入する形になるので、レートについては重大な変動があった場合に検討する。(左)
Q: 日本語化されたあと、ゲーム内トラブルについて日本語でカスタマーサポートを受けられるか?
A: 日本語ローカライズの公開後は、日本語でサポートを受けられるようになる。(左)
(注:日本語サポートがネクソンによるものか、CCPによるものかの言及はなかったが、別の CCP インタビューで、ネクソンのサポートは決済関係のみというコメントがあった。インゲームサポートについては CCP が日本語対応可能なゲームマスターの求人を出している)
Q: 日本語ローカライズのリリース時期は?
A: 近日中に発表する。(どっちの回答か忘れました)
Q: 新しい艦船の追加予定は?
A:以前行った艦船デザインコンテストの入賞作をインゲームに登場させる。現在アートチームがコンセプトアートからモデルを起こしているところ。新しい船を導入する際は、その船ならではの役割(ロール)を割り当てるようにしている。そのため、要望があるのはわかっているが、あまり頻繁に追加はできない。(O)
Q: PvE 要素、特にミッション回りに関する今後の展望は?
A: ワームホール内でのミッションの投入、また Incursion ミッションの拡充を考えている。(O)
Q: EVE 世界のリアリティ追求のために今後追加する予定のコンテンツはあるか。株取引システムなどは以前から要望があるが……
A: 株取引については、今のところ安定したシステムを確立するのは難しいと感じている。(O)
Q: タブレットによるプレイに対応予定は?
A: 現在のタブレット機の性能では難しい。DUST 514 では コンシューマ機でのプレイが Tranquility にリンクするシステムを採用するが、将来的にタブレットの性能が向上すれば、同じシステムを利用してタブレットも接続できるかもしれない。(O)
フリーディスカッション
参加者が大きく数卓に分かれ、自由討論を行うコーナー。出てきた意見は CCP の開発チームに持ち帰るとのことで、日本語・英語両方の記録係を用意したあたりに CCP の本気を感じた。
今年7月に小規模なプレイヤーミーティングのお世話をした関係で、1卓の進行役をすることになったが、いかんせん時間が30分しかないのに人数が多すぎた。事前打診を受けた時に「1テーブル10人を超えるとセッションハンドリングが難しい。1卓が大人数になるならせめて部屋分けを」と言ったのだが、諸般の事情でああなった。向かいの人の声はほとんど聞こえなかったという人もいたのではないか。
私の卓ではもっぱら NullSec の Local チャットに関する話題となった。現状の System 出入りが即座に反映される方がいいという人、WH のように発言するまで反映されないのがいいという人、時間差をつけてはどうかという人、意見が割れた。「Industrial Hub のアップグレードによって支配 Alliance がチャットの形式を選べるというのはどうか」というアイデアが出て、I-Hubの破壊がそのまま情報戦になるのは面白いと個人的に思った。
ただ、この卓は興味が HiSec, LowSec, Nullsec, WH, 復帰タイミングをうかがっている引退組、と見事に興味が分散していたのと、日本語苦手なプレイヤーも混在していたので議論が難渋した。結局、時間切れでWHやHiのトピックには言及できず、申しわけなかったです。
後知恵だが、事前に議題を募集して傾向も分かっていたわけだし、最初からある程度興味あるトピックで卓を分ければよかったのではないか、と思った。
チャリティーオークションと抽選会
会場入口で来場者の視線を集めていたのはチャリティオークション出展のアートパネル(4Gamerに写真あり。A~Dの記号が付いているやつ)。イベント告知メールに使われていた、東京に EVE 艦船が襲来する画像はどうやらこのアートの一部だったようだ。街並みはよく見ると秋葉原や表参道で、日本のプレイヤーを直球狙いの作品らしい。用紙に名前と落札価格を記入して投票するサイレントオークション方式だったが、休憩時間の15分で入札を済ませるように言われたのは若干せわしないなと感じた。
落札総額16万3000円に、CCPが同額を上乗せし、日本赤十字に震災義援金として寄付するそうだ。落札した4人の中で最高額を提示したのは Existential Cowboy というハンドルの男性で、司会に理由をインタビューされて「for good cause!(いいことしたいからね!)」と言っていた。男前。
さらに、nVidiaの3Dビジョンシステムやらグラボやらが当たる抽選会があった。CQ も最高画質でぬるぬる動いてしまう良いグラボだったんだけど、ああいうの、自分で差し替えできるほどパソコンに詳しくない人がもらった場合どうしてるんだろう……当選者の一人は「俺 Mac 使いなんだけどなあ(苦笑)」と言ってたし。
雑感
- CCP もネクソンも、まだ日本のプレイヤー層を正確に把握してないんじゃないかなあ、という違和感があった。キーノートは半分以上「EVEをやったことがない人向けのプレゼン」のように思われた。だが、そもそも告知は既存プレイヤーに向けて発信されたものだったし、実際に集まってきたプレイヤーのほとんどは、現役で英語版をばりばりプレイしているか、引退したベテランか、日本在住の外国人でそもそも英語に抵抗がないか、だ。結局、誰にむけて発信してるのか、ちょっとわかりづらい。
- 公式フォーラムやニュース、Dev Blogなどの内容を欠かさずチェックしている日本人プレイヤーはけっこういる。冬の拡張にも来年の Fanfes にもまだ遠く、新発表をするには中途半端な時期ではあったが、もう少し Capital Ship バランス調整とか FW 改善とか、コンテンツに踏み込んだディープな話をしても充分ついていけたと思うし、それを期待したプレイヤーは私ひとりではないと思う。
- ただ、プレゼンやビデオレターの半分ぐらいは、取材に来ていた報道関係者へ向けたものだったのかもしれないと思う(プレゼン中もカメラフラッシュがけっこう光っていたし、ノートPC広げてノートテイクしてたのはたぶんあのニュースサイトの人だし、うーん、かなりの人数いたんじゃないだろうか)。ゲーム系ニュースサイトの中には、やっぱり EVE は日本で知名度がまだまだ低いゲームなんだなと思わされる報道も見かけるので、プレゼンとしてはああいう根本的な特徴から話をするのは、正しい方向なのかも。
- 日本在住プレイヤーのコミュニティへかける期待はビデオレターやキーノートから十分に伝わってきたが、それを目的としたイベントにしては、やはりディスカッションの時間が短すぎたのが残念。議論慣れしてない人はあれだけの大人数卓だと積極的に発言しにくいし、進行役としても聞き取りづらい。興味別で卓を分けるとか、もう少し卓数を増やして少人数にするといった工夫が必要だと思う。
- 当日の受付や運営は日本人スタッフで(聞かなかったけどたぶんネクソンの人だろう)、フリーディスカッションのテーブル編成で混乱があったものの、全体的には大変スムーズだった。アンケートや抽選券といった小道具もきちんと作りこまれていて、行き届いた印象。
- 通訳の人は EVE の予備知識がほとんど無かったらしく、大変苦労していた。どれがゲーム用語でどれが一般名詞か判断つけられなかったようで、長めの発言ではトピックをくみ取るのが精いっぱいという場面も。まだ日本語版が公開されてないから仕方ない。お疲れ様でした。
- 司会の女性まで英語堪能だったのでびっくりした。ステージに上がったプレイヤーが日本語苦手とみるや、ネイティブばりの流暢な英語に切り替えてインタビュー。まさに「ザ・プロフェッショナル」という形容が似合う堂々たる仕事っぷりだった。
- 開会前の会場スクリーンには、「I was there」や「CDIA Files: Sansha」といった過去のトレイラー画像が日本語字幕付きで流されていた。Sansha の字幕版は確か本邦初公開のはず。すでに英語で何度も見ているものだが、大スクリーンとホールの音響、そして字幕付きで見るのは映画風でいいものだ。
- たくさんの方とお会いしたのですが、顔と名前を覚えるのが苦手なたちで、おまけにディスカッションの進行どうしようとずっと考えてたので、気もそぞろなご挨拶になり、失礼いたしました。あと終了後も関西にとんぼ返りだったので、いつのまにか消えててすみません。
- 元 Corp 同僚のプレイヤーさんの恰好が会う度にパンクになっていく件。あんまりインパクトが強烈だったのでプレスの人に「写真撮っていいですか?」って声かけられてアートパネルの前で撮影されてた。あのヨコシマなシェード、どこでも売ってますよ、とかさらりと言ってましたが、嘘だろうそれ。
- 会場、意外と女性多かった。予想では片手の指で数えられる程度だと思っていたが、明らかに彼氏連れで来てる子とかいた。EVE女子会ができる日もそう遠くないかもしれぬ。
- ネクソンの左留間氏が登壇するたびにきっかり左15度に顔を向けていたのが不思議だったが、前方に座っていたプレイヤーの話ではかなり緊張した様子だったとのこと。メモを見ながら話をされていたんでしょうね。
- 今回のイベント告知にあたり、情報提供いただいた CCP の Kristin 女史ともお会いしてきました。オトナの魅力なブロンド女性でした。ディスカッションの打ち合わせしながら半分「うわーかっこいいなー」とかミーハーなこと考えてたのは内緒です。
参加者全員に配布されたおみやげ。「EVE Online Tokyo | October 2011」のロゴ入り。
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